仕事の調査で近所にある高松土木事務所へ行った。
去年は5カ月の間に80回以上通った場所である。
私の所属する高松市消防団多肥分団は20数年に一度当たる消防ポンプ車操法
(消防車の操作に関する演技)の大会出場が当たっていたのである。
そしてこのだだっ広い駐車場は消防ポンプ車操法の練習場所に
もってこいなのであった。
4月の朝4時半はまだ暗い。
目の前にある駐車場内の電燈が煌々と照らしている駐車場の車止めに
目をしょぼしょぼさせて座ってたっけ。
5月もゴールデンウィークを過ぎたあたりから5時ぐらいにはだいぶ
明るくなってきて勢いのある小鳥のさえずりに初夏を感じてたなぁ。
6月には雨が降ってできた水たまりの中強引にやったもんだ。
どっちみち汗だくになるし関係なかったか・・・・
7月は朝から猛烈な蝉の叫びが印象的だったな。
8月になったら盆もほとんど休まず練習漬けで俺も含めてみんな
かなりまいってたよなぁー。それでも準備や片づけの人たちも
誰も欠けることなく来続けていることに励まされ力を振り絞ったもんだ。
9月はほぼ毎日の特訓で限界を通り越したしんどさと近づいてくる大会への
緊張感でみんな妙にハイテンションだったよなぁー。
みんなの前で訓練が始まる前から優勝優勝と言い続けていた分団長は
大会前日に
「ここまでみんなとこぎつけられたこの団結という財産をもらいました。
明日はそのおまけみたいなもんです。」
と放った。みんなも同じ気持ちだったしその言葉を意気に感じたもんだ。
そして優勝できみんな泣きそうになったよなぁ。
年齢も仕事もばらばらである消防団員たちが一文にもならないことを
知りながら約半年間言葉に言い表せない苦労を最後まで分かち合うことができ
それが最高の形で報われたことに対して。
なんてことを思い出しているとどうも感傷的になり胸が締め付けられる。
しかし心地よい複雑な感情。
甘酸っぱい思い出に浸りながら駐車場を出ようとすると出口横に
線の跡が2本残っていた。
あの2本の線は停止線と集合線である。
早朝暗いうちからあの線に4人のかかとが揃うべく何百回も踏んだ線である。
まだ俺たちがここでやっていた証があった!
鼻の奥が少し熱くなった。